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: 標準太陽モデル過信すべからず : 太陽の内部を音波で見る : 太陽振動を捉える

太陽内部の音速診断

沢山の固有振動数が精度良く測られれば太陽の内部診断が出 来ようというものだ。振動を解析する事により、太陽内部の音速分布が判る。図4に、 最近のデータを基にこうして求めた太陽内部の音速分布を示す。誤差の帯の幅は、観 測された振動数の誤差に対応している。中心近くで、単調でないのは、中心部で、ヘ リウムが外より多く含まれていることを示していて、中心核での核反応の証拠と見な す事が出来る。また、太陽の年齢をこれから決める事が出来る。太陽の 音色を聴くだけで年齢が判るなんて、画期的でしょう! 太陽中心部で核融合で発生したエネルギーは輻射で運ばれるが、 ある程度より外側では対流で運ばれる。 中心から約0.7太陽半径ぐらいのところで、図の傾きがガクッと急に 変わっているところが輻射層と対流層の境である。太陽の対流層がどれ位 深いかという事は理論的に正確には決める事が出来なかった。日震学による音速診断か ら初めて太陽の対流層の深さを見る事が出来たのである。

図 4: 太陽の固有振動から求めた太陽内部の音速の二乗の分布。
\includegraphics [height=13cm,angle=270]{c2inv.ps}

これまでの標準太陽モデルの音速分布と、こうして求めた現実の太陽内部の音速分布を 比べてみよう。図5は、ある標準太陽モデルと図4に示した現実の太陽の相対 的差を図示したものである。モデルとの差は高々0.5%。 それに対し、図に見るように、 観測データが異なっていてもほぼ同じ結果が得られていて、観測誤差、決定誤差は 高々0.1%で、モデルとの差異は有意である。 輻射層の上部 ($r/R\sim0.65$)に特徴的な差が顕著である。

図 5: 固有振動から求めた太陽内部の音速の二乗 と従来の太陽モデル との相対差。観測データ毎に、違う線で表示しているが、 全体の傾向は一致している。Takata,M. & Shibahashi, H. 1998, ApJ, 504, 1035 から転載。
\includegraphics [height=14cm,angle=270]{c2inv_relative.ps}